数字について【MENSA, IQ, 偏差値, 割合, etc】

僕は、MENSAという高IQ団体に所属しています。

この団体への入会条件は、人口上位2%のIQを持っているということで、数値にしてIQ130以上ということになります。僕は厳密なIQテストを受けたことがないので自分のIQ値を知りませんが、MENSAの実施するテストを受験し、入会を許されました。

さて、この数字をどう捉えるか、というのが今回の主題です。

が、その前に断っておきたいのですが、僕はMENSAという団体が割と好きで、とても楽しく交流ができているため、IQという指標自体の是非や、MENSAのテスト内容の是非、これから述べるような「2%という基準」の是非、等々をさておいて、ある程度IQが高い自覚のある方には、是非入ってみることをオススメします。日本支部であるJAPAN MENSAはウェブ上で模擬試験等を掲載していませんが、ヨーロッパのMENSA、例えばノルウェーのMENSAはオンラインで模擬試験を公開したりしているので、試しにやってみるのも良いかもしれません。

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では本題。IQという数値について考えます。例えば、先述のMENSAの基準IQ130以上、というのは、標準偏差15における数値で、海外では用いられることのある標準偏差24の値で言うと、IQ148以上となります。

何を言っているのか、と思われる方もいるでしょうから、ざっくりと説明すると、標準偏差(Standard Deviation 以下SDと省略)というのは言わば、データの散らばり具合です*1。先ほどから述べているIQという数値は、平均を100、SDを15や16や24に「設定」して、算出される値をいいます。従って、SD24の値は、SD15の値よりも散らばりが大きい、つまり平均との乖離が大きくなるため、言ってしまえば高くても低くても大袈裟に値が出ます。

そのため、IQはSDとセットで示さないと指標としての意味が薄いということになります。ちょうど「中間試験で平均より20点上だった!」くらいのものです。その「20点」の価値が試験によって異なるためです。クラスの殆どの人間が平均 ± 5点くらいに収まっている中で一人だけ + 20点なら割とすごいですし、そもそも実は5教科合計点の話で平均 ± 100点以上もザラ、なんて話だとなんとも言えません。

ちなみに、SDが異なる値には簡単に変換が出来ます。平均との差を元のSDで割り、変換先のSDを掛けて、平均に足して戻してやるのです。例えば、SD24でIQ136は、SD15では、(136 - 100) ÷ 24 ×  15 + 100 = 122.5ということになります。

さて、似たような指標に、所謂「偏差値」があります。似ていると言っても、知能指数と学力は似ている、とかそんな話ではありません。この二つは全く異なるものを測っている指標です。が、偏差値というのはテストの点数を元に、平均を50、SDを10に設定して、算出される値をいうため、算出方法という意味では似ています。雑な話ですが、たとえば偏差値60というのはIQでいう115(SD15)ということです。またIQ130(SD15)というのは偏差値でいうと70になります(繰り返しますが、IQと学力は全く異なる指標です)。本来、テストの素点なんてものは、平均点も散らばりも物によって千差万別のものでありますが、その平均値とSDを揃えることによって、あらゆる比較をしやすくしたのが「偏差値」であるわけです。IQなんて一般にあまり親しみのある指標ではないでしょうが、偏差値については値の感覚を掴んでいる人も多いでしょう。

では、人口上位2%という割合を考えてみます。そもそも人口上位2%という方がMENSAの入会基準としては先立っていて、IQ130云々は、IQの分布が正規分布に従うという性質から算出されたものです(正確には130より微妙に高い)。しかし、2%というのは50人に一人なので、学校の1, 2クラスに一人くらいの割合で居ることになりますし、満員電車なら一両に5, 6人くらい居ることになります。言ってみればそんなものです。友達100人居れば2人の割合ですが、友達は無作為抽出ではなく、大いにバイアスがかかっているものですから、もっと多かったり少なかったりするでしょうし、コミュニティによっても異なるものと思われます。

このように、同じ数字一つをとっても、測り方や捉え方、考え方、言い方によっても、表情は大きく変わると言えます。比較対象を持ってきて、さも意味ありげに「東大生の平均IQは120、MENSA最低IQは130(SD15)」と言うこともできれば、「日本人250万人以上が該当、全国の佐藤さんより多い」と言うこともできます。先日の禁煙化にまつわるデータもそうでしたが、数字やデータがあるだけで、人間ちょっと信じやすくなってしまう、どころか一気にまるっと信じてしまうなんてこともあるので、ご注意を。

*1:一言で定義すると、平均との差の二乗平均平方根です