コーヒー焙煎豆の保存

焙煎後のコーヒー豆について、如何に保存をすべきかというのは、既に多くの情報・議論があることなのですが、逆に情報が多すぎて諸説あるような状況にあるため、ここで一度僕なりにまとめてみようかと。主に旦部幸博『コーヒーの科学』を参考にしつつ、その他ネット上でこれまでに目にした情報、及び自分の経験に基づいて書いてみます。

コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか (ブルーバックス)

まず、もっとも重要なのは「なるべく保存しないこと」です。最初から矛盾した言い方ですが、如何なる保存方法を試しても結局は劣化してしまうので、なるべく早く飲みきってしまうというのが鉄則です。

その上で保存方法を改めて考えますが、コーヒー豆は焙煎直後から劣化を始めます。原因は主に、1.吸湿、2.酸化、3.香り成分の揮発 です。また、それらへの対策としては、第一に気密性の確保、第二に低温、その他には脱酸素や遮光などがあります。言ってしまえば、これだけなのでこれらを実現する環境での保存を行えばよいということになります。

しかし、実は経時劣化以外のファクターがあり、それが少し事態を複雑にしています。

一つは、焙煎豆内部の炭酸ガスです。焙煎直後にはこれが充満していて、抽出時に阻害となったり、酸味として出たりします。そのため、焙煎後常温で数日経ったほうが美味しい、とされますし、僕自身、経験上もっとも美味しいと感じるのは焙煎後1-3日ほどで、豆の種類や焙煎具合によって少し前後するイメージです。また、経時劣化とは書きましたが、これを「劣化」ではなく「変化」と捉える向きもあります。コクが増してくるとか、味わいがまろやかになってくるとか、と考えるのです。そのため、焙煎後の日数を長めに取る人もいるようです。

個人的には、焙煎直後にこだわる「鮮度主義」も、焙煎4,5日以上をベストとする「熟成主義」も、どちらもちょっとあやしいなぁと思っています。特に前者は炭酸ガスの存在を考慮していなさそうです。後者に関しても、経時変化によってコクが増してくるというのには僕は懐疑的ですし、まろやかというのも香味成分の減少を言い換えてる可能性がありそうです。また、繰り返しになりますが、豆の種類や焙煎具合によって異なると思うので、どちらかに断じてしまうべき事項でないと思います。

ファクターのもう一つは、冷蔵・冷凍保存に潜んでいる罠のことです。何かというと、冷蔵・冷凍保存していた豆を外気に触れると結露が起こるため、一気に吸湿してしまいます。今から挽く豆は、まぁすぐ淹れて飲んでしまうので大した劣化は起こらないかもしれませんが、また冷蔵・冷凍庫に戻る豆達は、外気から吸った水分との同居生活を送るハメになります。そのため、冷蔵・冷凍の際は一回分ずつと言わずとも、なるべく小分けにするのがベストと思われます。

これらを踏まえた上で、では僕がどうしているのか…というと、色々経た結果ちょっとテキトーで、そこそこ密閉できる容器で常温保存しています。それこそ、焙煎後に常温で1-2日待ってから一回分ずつ量って小さな袋に小分けにし、それをさらにジップロックに入れて冷凍保存し、飲むときには少し前に一回分の小袋を冷凍庫から出して、常温に近くなってから小袋開封、とまでやってみたこともありました。

が、冷凍した豆は何故かちょっと「おもしろくない」。クリーンな味だし、香りも抜けていないのですが、広がらないイメージというか、まとまっている感じというか、そんな感想を持つことが多かったのです。そのため、上記のような保存法で、飲みきってしまうまでの一週間ほどの劣化ないし変化も楽しみながら飲んでいます。今回書いたように、情報も割と整理されてはきたのですが、経験則的な部分も含めるとまだ個人的には研究中といったところです。