人間における「自然」のはなし

人間が用いる「自然」という言葉は往々にして不自然なんではないか、という話です。

先日見たアニメ「すべてがFになる」に登場したセリフ*1で「自然を見て美しいなと思うこと自体が、不自然なんだよね。汚れた生活をしてる証拠だ。」というのがあり、成程と思いましたが、まさに自然というものは我々人間以前からあったものなわけで、元々自然しか無かったわけです。それが普通です。だから、それに対しての「美しい」という言葉は、逆に人工物や「人間的なもの」にまみれた生活をしていているからこそ、それらとの対比によって出てきたものであり、つまり「不自然」に生み出された感性なわけです。

というのを、ノンオイル中華ごまドレッシングをサラダにかけて「やっぱり物足りないなぁ」とごま油を追加でかけて食べている最中にふと思ったのですが、似たような論理で「ノンオイル」というのも不健康な感じがします。そもそも油脂分が含まれるのが普通なものからわざわざ人工的に油脂分を抜いているわけです。油脂もまた必要な栄養の一つのはずですが、油脂を過剰に摂取してしまいがちな現代的な食生活を送っている人たちのために、抜けるところは抜こうという発想で「ノンオイル」にしているということだと思います。その他「カロリーオフ」「低コレステロール」「糖質オフ」「プリン体ゼロ」エトセトラエトセトラ。だから「健康ブーム」なんていう言葉については、僕はとてつもなく胡散臭さを感じてしまい、その中に含まれること全般に、裏返しの不健康さを感じて仕方ありません。

食事を自分で作ってみると、普通のことを普通にやるだけで美味しいものが当たり前のようにできたりしますが、しかし逆にそれを「美味しい」と感じるのも、もしかすると、普通のことを普通にやっていないヘンなものを普段食べてしまっているからなのかもしれません。

僕の住んでいる東京という街は、多分世界的にも不自然ランキングでかなり上位に来そうな街ですが、そんな街に住んでいるからこその意味もあるとは思いますが、なるべく「普通」な生活を送りたいものです。

*1:森博嗣による原作にもある