『正解するカド』は、仏教VSイスラム教アニメ(10話時点感想)

※未視聴の方はネタバレにご注意下さい

9話での「超展開」を経ての今話。この展開には幻滅するような向きもあるようで、まぁそれもやむなしという気はします。8話までの流れのまま、硬派SF寄りのままで物語が展開していくことへの期待は僕もありましたし、圧倒的な異方の力に対して、主人公・真道や徭の交渉術が活躍し世界の命運を握っていく、というの展開にも期待があり、それには個人的に「アツさ」を感じていました。それが、言うなればグレンラガン的になってきたような感じは、正直ちょっと残念だとは思っています。

しかし、この記事を書くにあたって色々考えて気づいたのですが、これはSFでもグレンラガンでもない、ガチ宗教思想アニメなのではないでしょうか。というのも、徭沙羅香というキャラクターが、見れば見るほど分かりやすく非常に仏教的存在なのです。

その話の前に一旦、10話の内容を見てみましょう。まず、「トワノサキワ'」というタイトルです。今話OP直後の宇宙創生を描いていると思われる映像において、画面左に違法存在達の会話と思われるものが字幕で流れます。これに登場するのが、ト、ワ、ノ、サ、キの五人(と言う数え方は正しいのか。。)であります。そこで、タイトルをよく見ると、「トワノサキワ'」と、最後は「ワ’」になっています。ダッシュ或いはプライムです。これは恐らく、現在の徭のことを表していて、異方存在であった「ワ」が宇宙という低次元世界に降り立つために、自らを変換し、「ワ'」になったということでしょう。ある意味、微分なのかもしれません。まぁそれでいえば、異方はこの宇宙+37次元らしいので、「ワ'''''''''''''''''''''''''''''''''''''」になりますが。

ところで少し脱線しますが、僕が間違ってるかもしれないんですが、前話のザシュニナの「異方はこの宇宙の次元に37を加える」というのと「この宇宙の37乗倍の情報量」って矛盾してる気がするのですが。指数法則で考えれば、前者を前提とすれば40/3乗倍の情報量、後者であれば異方は3*37=111次元になるのでは?と言いつつあまり自信なし。誰か数学分かる方教えてください。しかしこれもし万が一、制作側が間違ってるとかなりダサい、というかもうSFとして失格になりそうなので、割と大事なところです。なので妙な言い方ですが僕が間違ってて欲しいところです。。

もう少し脱線して、真道が前話において、「光の速さも、力の大きさも、みんな異方存在が決めたというのか」と発言してますが、ここで「光の速さ」と「力の大きさ」という二つをチョイスしたのは、特殊相対性理論の中の「E=mc^2」から来ているのでしょうかね。でもホント僕文系だしニワカにもほどがあるので、誰か(ry

話を戻しますが、この異方存在の会話の中で気になるのは、「キ」が「行こう」と発言しているところです。つまり、徭と別に「キ」が宇宙にいる可能性があります。まぁ「自殺行為」とも言われているので、「キ」は何か失敗した可能性もあります。いずれにしても、今後何かの話でこれについては触れられそうです。

さて、「ワ」もとい「ワ’」について考えてみましょう。この「ワ'」について興味深いのは、その描かれ方が輪廻思想に基いていることです。植物を含め、色々な生命体を渡り歩いているように描かれています。

その「ワ'」の現在の姿、徭沙羅花の、その名前について考えてみましょう。

まず、沙羅花というのは、これは劇中でも明かされますが、沙羅双樹から来ています。そして、まぁ言わずもがなですが、劇中でもほのめかされるように、モチーフは平家物語の冒頭の一部「沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす」です。もっとも、劇中で引用されるのは「無常」「ただ春の夜の夢のごとし」の方ですが。そして、彼女はその「無常であること」に、愛を見出しています。刹那を一生懸命に生きる、ということに価値を見出し、それを愛しています。

では名字の、徭という字、初めて見た気がしたのですが、しかし調べてみれば律令制における労役、雑徭の徭であることが分かり、学校の歴史の試験でも書いていた可能性有り。いや歴史の成績悪かったから書けてなかったかも。。いずれにせよ、この「徭」という字は、労役を意味するようです。労役を苦と捉えるならば、輪廻を苦と捉えるという意味で仏教的です。しかし彼女は逆に、この世での限りある生にこそ価値を見出しているので、仏教の、輪廻からの解脱を目的とする価値観とは相違が生じていますが、先述の通り「無常」を愛しているわけですから、永久不変の我=アートマンを想定したり、善行を為してよりよき来世を、なんて考えるヒンドゥー教とは全く異なるので、やはり仏教的と考えたほうが良さそうです。ちょっと宗派レベルまでは分からない、というかコレも調べながら書いてるので、誰か宗教・思想分かる方(ry

では一方、ザシュニナの方はどうなのでしょう。もしかして、と思って調べてみると、どうにもイスラム教との符合が多く。「唯一なる神が、預言者を通して人類に下した啓典が、人類にとって正しい信仰の拠り所となる」(Wikipediaの一部分を要約)。これに当てはめて考えれば、ザシュニナという神(本人は否定してますが)が、真道という預言者の役を通じて、カド・ワム・サンサ・ナノミスハインという四つのもので、人類を「正解」に導くという構造、ほぼピッタリはまるではありませんか。イスラム教の啓典が四つであるという、数までピッタリです*1

ちょっと、まだ考察と、そのための知識が足りていないので、なんとも言えないのですが、沙羅花は仏教、ザシュニナはイスラム教、ということで、僕は「正解するカド』は仏教VSイスラム教である説」推します。

ただ、ザシュニナの目的:人間を異方へ連れていき「情報」を得ること、であったり、沙羅花の行動原理:人ラブ!であったりは、それぞれイスラム教や仏教に由来しているものではなさそうですが、とはいえ、現実にある特定の宗教の化身のような二人が対立しているわけですから、これにはっきりと勝敗がついてしまうのもマズいわけなので、それでは物語がこれからどうやって帰結していくのか、如何に帰結できるのか、というのは気になるところです。

また、少し鼻につくのは、作品に流れる人間主義・人間賛美的な価値観で、それも含めて考えると、最終的に沙羅花もザシュニナも消えてしまい、なんならワムとかもなかったことになり、人間は自らの足で歩いていく、的な着地になってしまいそうな気もしていて、それはどうにも残念な気がしています。なにか、もうひとくだり、想像を超えたような展開に期待したいところです。

でも、このあと「キ」が登場して、それが思いっきりキリスト教的で、三大宗教三つ巴みたいなのは流石にややこしいのでやめてください。

*1:まぁイスラム教の啓典は、四つそれぞれ別の預言者なのですが。ちなみに万が一、今回のナノミスハインのケースのように、実はワムやサンサのときも一度反対して、殺されて、コピーが政府にワム等を伝える、みたいな流れであったとすればもう完璧

ホッピー論

f:id:gheetaka:20170618034101j:plain

皆様はホッピーの「三冷」をご存知でしょうか。

僕も知ったのは割と最近なのですが、これはホッピーの製造・販売を行っているホッピービバレッジの提唱ないし推奨する、ホッピーの美味しい飲み方です。「三冷」とは即ち、「ホッピー・焼酎・ジョッキの3つをよく冷やすこと」なのですが、まぁそれ自体は、なんというか普通というか、まぁそうだろうね、という感じなのですが、これのミソは「三冷」自体というよりも、その「あと」にあります。

三冷(さんれい)

ホッピーのおいしい飲み方。ホッピー・焼酎・ジョッキの3つをよく冷やすこと。 昭和40年代後半ごろ発明されたと伝えられる。

① ホッピーと甲類焼酎(25°)をよく冷やし、ジョッキは冷凍庫で凍らせてください。
② 焼酎、ホッピーの順に注いでください。黄金比率は1:5。泡が立つように勢いよく注ぎ、かきまわさないのがコツ。アルコール約5%のホッピーになります。
※氷を入れると風味が損なわれます。くれぐれもご注意を!

お気づきでしょうか。

  • 焼酎、ホッピーの順に注いでください。黄金比率は1:5
  • 泡が立つように勢いよく注ぎ、かきまわさないのがコツ
  • 氷を入れると風味が損なわれます

そう、こちらの方が衝撃的、というか馴染みがないはずです。何故なら、居酒屋でホッピーを頼むと、これに悉く反したものが出てくるからです。

一般的な居酒屋でホッピーを頼むと、常温或いは洗浄機で洗われてやや温かいジョッキに、氷がたっぷりと入れられ、その上でやたら多く焼酎が注がれていて、そこにマドラー*1が差してあって、それとセットで下手すれば常温のホッピーが登場します。なんでしょうか。ホッピービバレッジになにか恨みのある人間がプロパガンダでも行ったんでしょうか。「三冷」を知った上で、改めてこれを見ると、なにか悪い冗談のように思えてきます。

僕がこの「三冷」を知ったのは、高円寺の『大陸バー 彦六』という店で、今のところその時一度行ったきりなのですが、ここでこの「三冷」に基づいたホッピーが出てきたのです。これを飲んだ時、僕は素直に「美味い」と感じ、それは静かな衝撃でありました。何故ならそれまで、僕の中でのホッピーというものは「ザ・安酒」であって、安く酔っぱらえるということと、不味さが少ない*2、そして昭和レトロ的な空気を感じ(ている気分を感じ)られるということにのみ、価値を感じている飲み物だったからです。更に衝撃であったのは、店内*3に張ってあったホッピーのポスターにも小さな字ながら、この「三冷」について書いてあったことです。

それ以降、僕はホッピーへの評価を大きく改め、しかして外ではこの「正しい」ホッピーを出す店がほとんどないために、家でホッピー「正しい」飲み方で飲むこととしたのです。ちなみにここには、ドイツ・チェコへの渡航経験に基づいた、というかその経験のせいで、日本のビールに満足できなくなったという事情もあり、それならいっそ、ビールとは異なる飲み物としての*4、ホッピーという日本特有の飲み物に価値を見出して、飲んだほうがいいんじゃないか、なんていう考えもあります。

さて、話はもう少しマニアックになります。多分、僕が調べた限り、これからする話をちゃんと整理しているページはないはずです。ホッピイストの皆々様におかれては、有益な情報になるかもしれませんので、刮目していただきたく。というのは、基本的には、この「三冷」を前提とした話になると思いますが、いざ家でホッピーを飲もうと思って、スーパーに行ってホッピーを探してみると、なにやら見慣れないそれが並んでいるのです。

f:id:gheetaka:20170618041920p:plain©hoppy beverage co., ltd.

まぁしかし、パチもんでもなし、これで間違いなかろうと思って買って家で飲んでみると、

不思議と何か物足りないのです。

ちなみに、居酒屋で飲める業務用ホッピー、実はカクヤスなどの酒屋さんでも買えます。そのため、僕はスーパーで市販用を書い、カクヤスで業務用を買い、飲み比べブラインドテストを行いました。結果、何回も行いましたが毎回はっきり判別ができました。

これは、割と昔から議論があったようなのです。居酒屋で飲むホッピーと家で飲むホッピーは違う、と。居酒屋で飲むほうが美味い、と。そのため、ホッピービバレッジに問い合わせた人々もいたようです。何が違うのかと。しかしホッピー公式の答えは、原則的に「中身は何も変わらない」ということであったようです。そのため「居酒屋の雰囲気で飲むから美味く感じるのだ」という説も力を得ていたようです。

しかし実際のところ、この、スーパーで買える市販用ホッピーと、居酒屋で飲める業務用ホッピーにはいくつかの違いが有ります。

まず、容量。市販用ホッピーは330ml、業務用ホッピーは360mlです。

世の中には、これが味の違いであると考える人もいたようで。つまり、ビン封入時の中身は同じでも、それからの経時変化が、330mlと360mlではなにか異なるのではないか、と。

残念ですが、人間の、まぁ少なくとも一般的な人間の舌は、そんなレベルではないと思います。そこに違いが現れる可能性は、否定はしませんが、とは言え…。ちなみに、おなじような論点で、ビンの形状の違いを挙げている人もいましたが、同様の理由により、僕的に却下です。

次に、ビンの違いです。これは少し僕も支持していました。

これはどういうことかというと、市販用ホッピーは「ワンウェイビン」、業務用ホッピーは「リターナブルビン」なのです。前者は飲まれて空っぽになった後は、資源ごみとして割られて溶かされて、という末路を辿りますが、後者は殺菌洗浄されればそのまま再び使用されます。前者はリサイクル、後者はリユースです。

つまり、その違いが、なんらか味の違いになっているのではないかと。新たに作られたガラスビンの内側表面と、リユースされて使い古されたガラス瓶の内側表面では、なにか違いがありそうですし、内容する液体に対する影響も、何かしらの差異が生まれるのではないかと。そんなことを思い、僕はそのビンの種別によって味の違いが生じている説を少し支持していました。

はい。過去形であるのには理由があります。

注目すべきは、今年(引用者註:2011年)3月に完成したリターナブル瓶専用ライン。よりおいしいホッピーをつくるための確かな技術と、高性能の機械を導入している。このラインにより、味のクオリティを一層高め、より効率的に生産できるようになったとのこと

いや、これじゃん。

※2011年3月以前にも、市販用と業務用で味が違うと言っていた人はいたようですが、それは僕飲んでないので知りません

※これは調布工場の話なので、この工場の製造範囲外の地域で云々言ってる人も知りません

※逆に、「そういう都市伝説あるけど、飲み比べてみたら全く同じだったよ」という人もいます。が、少なくとも調布工場のものに関して言えば違いがありそうで、僕はそのエリアと思われますので、そのエリアの人で同じだと思う人は、あんまり分かってないだけかもしれません。

はい、ともあれ、ホッピーの三冷、是非キンミヤ焼酎を買って、ご自宅でお試しあれ。

*1:ちなみに今度居酒屋でホッピーを頼んだらビンの記述を読んでみてください。傷つくからホッピーのビンにマドラーを差さないでください、とあるはずです

*2:これって実は結構微妙な話で、美味いかどうかとはちょっと別の話です

*3:厳密には店を出てすぐの廊下ですが

*4:つまりビールの代用品としてのそれでなく

本日の酒:栄光冨士 SHOOTING STAR 純米吟醸 無濾過生原酒

f:id:gheetaka:20170617031212j:plain

↑値札ついたままですね。。

世田谷区の、住所としては「池尻」、周辺の学校的には「駒場」にあります、山内酒店にて購入した栄光冨士 SHOOTING STAR 純米吟醸 無濾過生原酒を飲んでいます。

コレ、結構美味しいです。夏限定の酒ではありますが、こういう系統にありがちな、爽やかでスッキリ、サッと通り抜けていく、みたいなイメージではありません。思ったよりしっかりしていて、複雑な味わいがあります。

まず、香りは比較的華やかです。口に含むと非常に飲みやすいイメージ、スムースでラ・フランス系の甘みが感じられ、フィニッシュにかけて米のしっかりした味に変わっていきます。アフターに向かう中で、鼻にアルコール感が抜けていきますが気になるほどでない範囲で、一方で舌には少し苦味が感じられます。とは言え、苦味も個人的にはギリギリ不快に感じない範囲、かえってそれは味わいを面白く複雑にしている感があります。余韻を残しつつ後味も消えていき、しつこい印象はありません。

僕としては、この日本酒は結構好きな部類、特にこの苦味が後味を複雑にしていきながら、米のしっかりさを印象づけていく過程なんかが結構特徴的で、割とクセになると思うのですが、しかし正直に言って、あんまり「夏酒」のイメージは持ちませんでした。"SHOOTING STAR"なんていうくらいですから、どんな鮮烈な日本酒体験かと思ったのですが、ちょっと名前の印象とは異なりました。

どうやらこの「夏酒」というジャンル、秋にひやおろしが売り出されるまでのこの時期、日本酒の売上が低迷していることから、夏にもスッキリとした日本酒を!ということで、売り出されているものらしいのです。まぁ、夏といえば、凍るくらいにキンキンと冷えた(笑)*1、キリッと切れる辛口の(笑)*2、銀色の缶のドライビール(笑)*3を飲むのが相場と決まっていますから、その影響も受けて、日本酒の売上が下がることは、なんとなく想像がつきます。とは言え、現代の冷蔵技術に感謝しつつ、しっかり冷やした日本酒をワイングラスにでも注いで飲むなんてのも乙ですし、それが、ビールに対して魅力が劣っているなんて僕は微塵も思いません。そりゃ僕だってビールは好きですが。ドイツかチェコかベルギーかに移住したいくらい好きですが。

僕はどういう日本酒が、どの地域の、どの米の、どの銘柄の、どの種類の日本酒が美味いかなんて、そんなに分かりません。餅は餅屋と言います。同様に酒は酒屋です。良さそうな酒屋は、慣れれば結構パッと見で分かるものですが、分からずとも少し調べれば知ることができます。良い酒屋で、お店の人とコミュニケーションを取りながら一本を選んで買うというのが、酒の最も良い買い方であると思っています。国の名前を冠した酒です。日本にいるなら、折角なら美味い日本酒を飲みましょう。

※そう言いながら今日は全然相談もせずに買ってしまいました

※明日はホッピーの話をする予定です

※というか今日ホッピーの話しようと思ってたのに、写真取る前に忘れて全部飲んじゃってました

*1:悪意その一

*2:悪意その二

*3:悪意その三